2012.10.18
2013.1.29改
2013.1.29改
著作:週末は畑です
1.輪作とは畑の敷地を複数の区画に分けて、各区画で毎年育てる野菜を順繰りに変えていくことを輪作と言います。逆に同じ場所で続けて同じ種類の野菜を育てることを連作と言います。連作を続けると収量が減る現象(連作障害)が出る野菜があります。輪作はこのような連作障害を避けるために行うものです。連作すると野菜の病気が出やすくなりますから、無農薬栽培では、とくに念入りの輪作が必要と思います。
輪作用の区画は通常4区画以上確保します。毎年同じ所でも全然問題ない大根のような野菜もあれば、4-5年は連作障害が出るエンドウもあるので、5年目で一回りする4区画ならば、ほぼ障害はなくなるというわけです。例えば、第1から第4までの区画にA,B,C,Dの4種類の野菜を植えるとすると、1年目は図1左のようになりますが、翌年は右のように一つずらした区画に植えます。翌々年にはさらにもう一区画ずらす、を繰り返すと5年目には1年目と同じ作付けになります。
1年目
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2年目
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3年目
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4年目
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区画
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1 2
3 4
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1 2
3 4
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1 2
3 4
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1 2
3 4
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作付
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A B
C D
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B C
D A
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C D
A B
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D A
B C
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図1 輪作の考え方
2.野菜の種類と連作障害
連作障害の期間は野菜の種類によって違います。表1は、主な野菜の望ましい作付け間隔を示しています。この期間より短い間隔で作付けすると連作障害がでるおそれがあります。ナス、トマト、ピーマン(表にはありませんがジャガイモも)はいずれもナス科なので、種類が違っても連作障害が出ます。またエンドウも、連作障害が激しく出る野菜です。
表1 主な野菜の望ましい作付け間隔年(1)
間隔
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野菜
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毎年
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サツマイモ、カボチャ、人参、大根、ネギ、タマネギ、ニンニク
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1年
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ホウレン草、小カブ、インゲン
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2年
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ニラ、パセリ、レタス、ミツバ、白菜、キャベツ、セルリー、キュウリ、イチゴ、ショウガ
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3年
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ナス、トマト、ピーマン、里芋、ゴボウ
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4年
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スイカ、エンドウ
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3. 輪作設計
輪作設計はやってみると意外と難しいものです。育てたい野菜は多いが連作障害をさけようとすると区画が足りない、など思い通りには行きません。ここでは基本的な考え方を整理します。
3.1 作りたい野菜と作形、量をリストアップ
第1段階は、いつ、どんな野菜を、どれくらい作りたいかを明らかにすることです。畑を4区画に分けるとすると、多くても畑全体の面積の1/4の量を作付けするのを基本とします(これをさけるための方策もありますが)。また連作障害は同じ科で生じることが多いので、同じ科は一つの区画におさめます。
例えば、
春ー夏
A ナス科:ナス、トマト、ピーマン(5−10月)
B ウリ科:キュウリ、カボチャ、スイカ、ウリ(4−9月)
C 芋類: 里芋(4−12月)、サツマイモ(6ー10月)(注)
D キク科、セリ科:レタス(3−6月)、人参(3−7月)
秋ー冬
E 菜花科:大根、カブ(9−12月)
F 菜花科:ブロッコリ、カリフラワー、キャベツ、白菜(9−3月)
G キク科、セリ科:レタス、人参(7ー12月)
H マメ科:エンドウ、ソラマメ(11−6月)
という感じです(AからHはそれぞれ畑の1/4区画分です)。この時点で、連作障害の多い作物どうしが重ならないように整理できたことになります。
(注)芋類は、ジャガイモ=ナス科、里芋=サトイモ科、サツマイモ=ヒルガオ科、山芋=ヤマノイモ科で、それぞれ科が違います。ただしジャガイモはナス科ですから、もしジャガイモを植える場合は、トマト、ナス、ピーマンなど、ほかのナス科野菜との連作に気をつけなければなりません。
3.2 系列検討
次にやるべきことは、春−夏のA, B, C, Dと秋−冬のE, F, G, Hを、順繰りに輪作できるように、1から4の区画に並べることです。一見難しそうですが、一つの区画について考えると、翌年は隣の区画で作っていたものを作ることになるので、結局AからHまでを栽培期間が重ならないように一列に並べることができれば完成です。
ではやってみましょう。
A(5-10)、H(11-6)、G(7-12)、C(4-12)、D(3-7)、E(9-12)、B(4-9)、F(9-3)
でどうでしょうか。Bのキュウリ・カボチャなどが9月まででFのブロッコリも9月からなので重なってしまいますが、Bを早めに切り上げてFは苗を9月中旬までに植えることで何とかなります。Eの大根、カブはいずれも直播きで、大根は特に8月下旬から9月上旬にまいた方がいいので、この配列がいいでしょう。このあたりは、実際に2−3年経験を積むか書籍などの情報を参考にしてください。
おっと、上の系列を数えてみるとFの最後は6回目の春ですね。5区画必要ということです。里芋やエンドウなど作付け期間が長い作物が入っているせいでしょう。畝幅や長さを調節して5区画に分けるか、作付けを検討し直すか、いずれかが必要です。今回は5区画に分けることにします。その分、1区画の作付け面積も全体の1/5になります。
3.3 区画確定
次は、先ほどの系列を春が来るたびに次の区画に割り当てていきます。
1:Aナス科(5-10)、Hマメ科(11-6)
2:Gセリ・キク科(7-12)
3:C芋類(4-12)
4:Dセリ・キク科(3-7)、E菜花科(9-12)
5:Bウリ科(4-9)、F菜花科(9-3)
ちょっと気になるのは、4、5区画で秋もの野菜が同じ菜花科になっていることです。これを避けるために、5→3、3→4、4→5を入れ替えましょう。
1:Aナス科(5-10)、Hマメ科(11-6)
2:Gセリ・キク科(7-12)
3:Bウリ科(4-9)、F菜花科(9-3)
4:C芋類(4-12)
5:Dセリ・キク科(3-7)、E菜花科(9-12)
以上で完成です。
3.4 連作障害をさけるために
連作障害は、特定栄養素の欠乏や、特定老廃物・病原菌・害虫の集積等でおこると言われています。このような観点から、微量元素を多く含んだ腐葉土や堆肥を供給する、コンパニオンプランツと一緒に育てるなどの手段も連作障害の軽減に効果があります。
ジャガイモをのぞくナス科とウリ科の野菜やキュウリは、接ぎ木苗を使うという手段もあります。病害虫に強く連作の影響を受けにくい種類の苗を台木にしてその上に所望の種類の野菜を継いだ苗です。丈夫で収量も多くなります。一方、販売されている接ぎ木苗は普通の苗の倍の値段、自分で接ぎ木苗を作るのは手間がかかる、台木の影響が実にも出るので本来の風味ではなくなる、などのデメリットもあります。
参考文献:
1)竹内孝功:「これならできる! 自然菜園 ー耕さず草を生やして共育ちー」、農山漁村文化協会、2012.8
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「やさしい連作設計」、わかりやすく解説してあるのでためになります。連作障害をさけるために農家の方もよく考えて野菜を作ってみえるのですね。
返信削除1,2,3 とA,BCの意味がよくわからないのですが?
返信削除質問ありがとうございました。久しくブログ更新を中断していましたが、このように質問を頂くとまた再開しようかという気持ちになります。
削除ご質問への回答ですが、1、2、3。。。の数字は畑の区画番号です。一方A、B、C。。。は作付けする作物の種類を仮に表したものですので、実際には具体的な野菜名が入ります。例えばナス・トマト、キャベツ・ブロッコリ、レタス類、ニンジンなどです。野菜のイラストでも入れればわかりやすかったのですが、記号ばかりなので混乱しやすいですね。済みません。
輪作は、畑全体を複数の区画に分けて、昨年隣の区画で育てた野菜を一つずらして作付けする方法です。これまでの経験では、5区画以上あれば連作障害を避けながら輪作できます。私はExcel表に畑の区画どおりのマスを作って、作付けする野菜を書き込んでいます。冬の間に年間の作付け計画を作り(といっても隣のマスから野菜名をコピペするだけです)、年度途中で変更になった部分をその都度書き込んでいます。輪作設計だけでなく種まきの日付と生育状況を記した野菜育成ノートを作っても良いかもしれませんね。もしさらに質問があればお気軽にお尋ねください。