最近、通勤中に半藤一利の「昭和史(1926-1945)」を読んでいましたが、ようやく読み終えました。厚さ2.6cmと、文庫本としては分厚い本ですが、元々15回の講座を記録した本で、口語調の平易な文体で書かれているので、スラスラと読めます。
タイトルからわかるように、昭和の初めから終戦までの政府および軍部の考え方と行動を、ヨーロッパ、アメリカの動きと対比させながら、非常に詳細に記述しています。重要人物の発言録なども織り交ぜながらのドキュメンタリーで、リアリティが感じられます。
通読して強く印象に残ったことは、1)当時の多くの政治家・軍人が、世界の中の日本の実力を客観的に位置づけることができず、必要な対策を打つ代わりに神国日本の不敗神話の妄信によりどころを求めたこと、2)現状分析および将来計画において、都合の悪いことは起きて欲しくない、いや起きるはずがない、という考えで砂上の楼閣的ストーリーを描き、ことごとく失敗していること、です。
2点目については、つい最近聞いた覚えがありますよね。そう、いわゆる原子力村の人々の原子力発電所に対する考え方です。大型の津波は起きない、全電源喪失というような最悪の事態は起きないなどなど、自分たちの都合の悪い事象は思考の外に追い出そうとする行動様式です。1点目についても、最近の日本の電機メーカーの弱体化、連続赤字状態の本質と通じるところがあるように思います。
翻って自分の会社の置かれている立場を考えると、これは決して他人事ではない。恐ろしく速いスピードで変わっている外部状況や顧客の考え方に対して、我々は的確に対応できているか、対応する心構えができているでしょうか?また自分の会社の立場を過剰に評価・過信して客観的な評価を見失っていないでしょうか?会社の昔ながらの存在理由を妄信していないでしょうか?などなど、おおいに考えさせられる一冊でした。
ちなみに、この本には下巻にあたる「昭和史 戦後編(1945–1989)」があります。また同著者による「幕末史」も面白かった。
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